to Top
画像
ハーヴェイ・カイテル、ティム・ロス、クリス・ペン、スティーヴ・ブシェミ、ローレンス・ティアニー、マイケル・マドセン、エディ・バンカー、クエンティン・タランティーノ
クエンティン・タランティーノ第一回監督作品
映画『レザボア・ドッグス デジタルリマスター版』
英ビリング

          監督・脚本:クエンティン・タランティーノ
          製作:ローレンス・ベンダー
          出演:ハーヴェイ・カイテル、ティム・ロス、クリス・ペン、スティーヴ・ブシェミ、ローレンス・ティアニー、マイケル・マドセン、エディ・バンカー、クエンティン・タランティーノ
          1992年|アメリカ映画|99分|スコープ|DCP|原題:RESERVOIR DOGS|字幕:齋藤敦子
          キングレコード+ハピネット・メディアマーケティング共同提供
          鈴正+フラッグ共同配給 PG-12
          © 1991 Dog Eat Dog Productions, Inc. All Rights Reserved.
          
          監督・脚本:クエンティン・タランティーノ
          製作:ローレンス・ベンダー
          出演:ハーヴェイ・カイテル、ティム・ロス、クリス・ペン、スティーヴ・ブシェミ、ローレンス・ティアニー、マイケル・マドセン、エディ・バンカー、クエンティン・タランティーノ
          1992年|アメリカ映画|99分|スコープ|DCP|原題:RESERVOIR DOGS|字幕:齋藤敦子
          キングレコード+ハピネット・メディアマーケティング共同提供
          鈴正+フラッグ共同配給 PG-12
          © 1991 Dog Eat Dog Productions, Inc. All Rights Reserved.
新宿ピカデリーほか絶賛公開中
全世界の度肝を抜いた鮮烈のバイオレンス、30年ぶりに劇場公開

Introduction


              現代の映画は“ここ”から始まった。
              裏切り、信頼、忠誠が交錯する
              史上最高のインディペンデント映画、30年ぶりに劇場公開 
              現代の映画は“ここ”から始まった。
              裏切り、信頼、忠誠が交錯する
              史上最高のインディペンデント映画、30年ぶりに劇場公開

1992年、サンダンス映画祭で上映された
1本の低予算映画が熱狂を巻き起こした。
当時28歳の若手監督
クエンティン・タランティーノの
初長編作『レザボア・ドッグス』だ。

登場人物は黒服のギャング、題材は銀行強盗。
ありきたりなジャンル映画に思えたが
本作は“すべて”が違った!

冒頭から観客を飲み込む勢いで
繰り出されるギャングたちのムダ話、
時制を組み替えることで生まれる驚きと発見、
そしてこちらのテンションを
弄ぶようなプロットと
油断した瞬間に炸裂する衝撃的な展開……

大手メジャースタジオからは絶対に生まれない、
映画を愛する者たちによる、
映画を愛する者たちに向けた
“俺たちの映画”の登場は世界各地で絶賛を集め、
さらには本作を観た若者たちが
“自分たちの映画”をつくりはじめた。
現代の映画は“ここ”から始まったのだ。

日本では1993年4月の初公開以降、
“聖地”である映画館からは
長らく姿を消していた。
今回が30年ぶりの劇場公開となる。

いまも映画ファンに
愛され続ける6人の“イヌたち”は、
2024年の観客に
決して消えることのない
強烈な傷と衝撃を与えるにちがいない。

画像

Story

画像

                計画を遂行するためだけに集められた6人の男たち。
                狙いは宝飾店。準備も万全だった。
                しかし、襲撃と同時に彼らは罠にハメられていたことに気づく。
                男たちは集合場所にたどり着くが、
                ある疑いを捨てきれない。
                裏切者がいるのではないか? 
                男たちはぶつかり合い、やがて予想しなかった結末を迎える。

Cast & Staff

ハーヴェイ・カイテル/Mr.ホワイト ハーヴェイ・カイテル/Mr.ホワイト
ティム・ロス/Mr.オレンジ ティム・ロス/Mr.オレンジ
マイケル・マドセン/Mr.ブロンド マイケル・マドセン/Mr.ブロンド
クリス・ペン/“ナイスガイ”エディ・キャボット クリス・ペン/“ナイスガイ”エディ・キャボット
スティーヴ・ブシェミ/Mr.ピンク スティーヴ・ブシェミ/Mr.ピンク
ローレンス・ティアニー/ジョー・キャボット ローレンス・ティアニー/ジョー・キャボット
エディ・バンカー/Mr.ブルー エディ・バンカー/Mr.ブルー
スティーヴン・ライト/DJ K ビリー スティーヴン・ライト/DJ K ビリー
クエンティン・タランティーノ/監督、脚本、Mr.ブラウン クエンティン・タランティーノ/監督、脚本、Mr.ブラウン
ローレンス・ベンダー/製作 ローレンス・ベンダー/製作
アンジェイ・セクラ/撮影 アンジェイ・セクラ/撮影
サリー・メンケ/編集 サリー・メンケ/編集
KNB EFX Group/特殊メイクアップ KNB EFX Group/特殊メイクアップ
画像
ハーヴェイ・カイテル
Mr.ホワイト

1939年、米NYブルックリン出身。米海兵隊員やセールスマン、速記官を経て演技の道へ。オフ・ブロードウェイでキャリアを積み、マーティン・スコセッシの初監督作『ドアをノックするのは誰?』(67)で映画デビュー。その後、スコセッシ監督作『ミーン・ストリート』(73)『タクシードライバー』(76)の演技が高評価を集め、『バグジー』(91)の演技でアカデミー助演男優賞の候補に。本作では出演だけでなく共同製作を務め、タランティーノ監督作『パルプ・フィクション』(93)では“掃除屋”ウルフを演じた。その他の出演作に『テルマ&ルイーズ』(91)、『ピアノ・レッスン』(93)、『ユリシーズの瞳』(95)、『フロム・ダスク・ティル・ドーン』(96)、『アイリッシュマン』(19)など

preview
close
next
画像
ティム・ロス
Mr.オレンジ

1961年、英ロンドン出身。学生時代から演技をはじめ、1982年にテレビ映画でデビュー。本作の演技で注目を集めた。以降、『パルプ・フィクション』(94)ではレストランで強盗を働くパンプキンを、オムニバス『フォー・ルームス』(95)では狂言回しのベルボーイを、『ヘイトフル・エイト』(15)では紳士的な巡回執行人オズワルドを演じた。『ロブ・ロイ/ロマンに生きた男』(95)で英アカデミー助演男優賞を受賞。1998年には『海の上のピアニスト』で主演を務め、話題を集めた。その他の出演作に『リトル・オデッサ』(94)、『PLANET OF THE APES/猿の惑星』(01)、『コッポラの胡蝶の夢』(07)など。

preview
close
next
画像
マイケル・マドセン
Mr.ブロンド

1957年、米シカゴ出身。地元に拠点を置く劇団で活動をはじめ、1983年に『ウォー・ゲーム』で映画デビュー。『テルマ&ルイーズ』(91)でルイーズの恋人を演じて注目を集め、本作の演技で高評価を獲得。タランティーノ監督とは『キル・ビル』(03)で主人公の宿敵ビルの弟バドを、『ヘイトフル・エイト』(15)ではカウボーイのジョーを、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(19)では劇中映画に登場する保安官を演じるなどタッグが続いている。その他の出演作に『フリー・ウィリー』(93)、『スピーシーズ2』(98)、『007 ダイ・アナザー・デイ』(02)、『ドール・メーカー』(17)など。

preview
close
next
画像
クリス・ペン
“ナイスガイ” エディ・キャボット

1965年、米ロサンゼルス出身。10代から演技をはじめ、1983年に『ランブルフィッシュ』で映画デビュー。『トム・クルーズ/栄光の彼方に』(83)、『フットルース』(84)に出演し、『ワイルド・ライフ』(04・未)で映画初主演。本作で“ナイスガイ”エディを演じ、タランティーノの脚本をトニー・スコットが監督した『トゥルー・ロマンス』(93)にも出演。『フューネラル』(96)の演技でヴェネチア国際映画祭助演男優賞に輝いた。その他の出演作に『ショート・カッツ』(93)、『ラッシュアワー』(98)、『キス★キス★バン★バン』(00)など。2006年に死去。兄は俳優・映画監督のショーン・ペン。

preview
close
next
画像
スティーヴ・ブシェミ
Mr.ピンク

1957年、米NYブルックリン出身。演劇学校で演技を学んだ後、消防士やスタンダップ・コメディアンをしながら、俳優としてのキャリアを着実に積んでいく。1986年に映画デビューを果たし、本作の前身的な短編『Reservoir Dogs: Sundance Institute 1991 June Film Lab』にもMr.ピンク役で出演。『パルプ・フィクション』ではヴィンセントとミアが訪れるレストランのウェイター役で登場した。コーエン兄弟、ジム・ジャームッシュ、ロバート・ロドリゲス作品の常連で、『アルマゲドン』(98)などの超大作への出演、声の出演も多い。アメリカ映画界で欠かすことのできない俳優として人気を博している。

preview
close
next
画像
ローレンス・ティアニー
ジョー・キャボット

1919年、米NYブルックリン出身。舞台で活動した後、1943年に映画デビュー。『犯罪王デリンジャー』(45)で殺人鬼役を演じて人気を得た。その後も悪役や犯罪者役で数多くの作品に出演し、フィルムノワール愛好家から支持され、1952年にはオスカー受賞作『地上最大のショウ』に出演。一方で私生活では飲酒運転やバーで刺されるなど荒れた生活をおくり、俳優のキャリアに影を落とした。1950年代からはテレビにも進出し、『スター・トレック』シリーズや『探偵レミントン・スティール』などに多数出演。1999年に俳優を引退し、2002年に死去。

preview
close
next
画像
エディ・バンカー
Mr.ブルー

1933年、米ハリウッド出身。若い頃から犯罪に関わり、文書偽造罪や武装強盗等の罪で刑務所の出入りを繰り返した。獄中で初めての小説『ストレートタイム』を執筆し、1978年にはダスティン・ホフマン主演で映画化。その後も裏社会を舞台にした犯罪小説を執筆し、俳優として『ロング・ライダーズ』(80)や『暴走機関車』(85)、『バトルランナー』(87)などに出演。彼の小説の大ファンだったタランティーノのオファーを受け、本作でMr.ブルーを演じる。その後も名作リメイク『ロンゲスト・ヤード』(05)などに出演した。2005年に死去。死後、ポール・シュレイダー監督、ニコラス・ケイジ主演で小説『ドッグ・イート・ドッグ』が映画化された。

preview
close
next
スティーヴン・ライト
DJ K ビリー

1955年、米ケンブリッジ出身。ボストンでスタンダップ・コメディアンとしてキャリアをスタートさせ人気を獲得。1979年に映画初出演。コメディアンとして成功をおさめる一方、『マドンナのスーザンを探して』(85)やジム・ジャームッシュ監督の短編『コーヒー・アンド・シガレッツ』(86)、『イングリッシュマンinニューヨーク』(88・未)などに出演した。同年に出演したオスカー受賞短編『The Appointments of Dennis Jennings』(未)の監督ディーン・パリソットの妻が本作の編集を手がけたサリー・メンケだったことからDJ K・ビリー役に選ばれた。その他の出演作に『マスク2』(05)、『絵文字の国のジーン』(17/声の出演)など。

preview
close
next
画像
クエンティン・タランティーノ
監督、脚本、Mr.ブラウン

1963年、米ノックスビル出身。映画マニアだった母と一緒に映画を観て育ち、10代で劇団で演技を学んだ。その後、22歳の時にビデオショップ「マンハッタン・ビーチ・ビデオ・アーカイブ」の店員になり、仲間や客と映画について語り合い、浴びるように映画を観る。その後、パーティで出会ったローレンス・ベンダーに勧められ、映画脚本を書き、短編の制作を開始。資金調達が実らずに『トゥルー・ロマンス』の脚本の権利を売却したことから、その金で自主映画をつくるべく『レザボア・ドッグス』の脚本を執筆。ハーヴェイ・カイテルの尽力もあり、さらなる資金が集まり、1992年に本作で長編映画デビューを果たし、Mr.ブラウン役でも出演した。

『レザボア・ドッグス』は各国でカルト的な人気を博し、カンヌ映画祭にも出品。続く監督第二作『パルプ・フィクション』はカンヌ映画祭の最高賞パルム・ドールを受賞。映画監督として人気を博すだけでなく、彼自身が時代を象徴するアイコンとして大きな注目を集めた。

続いて1997年には大ファンのエルモア・レナードの小説『ラム・パンチ』を、70年代の映画史を語る上で欠かすことのできない大スター、パム・グリアを主演に迎えて映画化した『ジャッキー・ブラウン』を発表。時制が交錯する構成やセリフの巧みさは健在ながら、大人のロマンスを描く新境地を見せ、サミュエル・L・ジャクソンがベルリン映画祭で銀熊賞(男優賞)に輝いた。

ひたすらに映画を観まくる年月を経て、2003年に超大作『キル・ビル Vol.1」でスクリーンに帰還。復讐劇、ヤクザ映画、怪獣映画、カンフー映画など多種多彩な映画へのオマージュに満ちた怪作で、翌年には同作のVol.2が公開された。

2007年には朋友ロバート・ロドリゲスと2本立て映画『グラインドハウス』を制作。タランティーノはカート・ラッセル主演の『デス・プルーフ』を手がけ、映画ファンから熱狂的な支持を集めた。

その後も、第二次世界大戦のフランスを舞台にした『イングロリアス・バスターズ』(09)や、キャリア最高の成功をおさめたウェスタン『ジャンゴ 繋がれざる者』(12)、一度は脚本が流出し制作を諦めるも新たな脚本で撮影に挑んだ『ヘイトフル・エイト』(15)、レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットをキャストに迎えた『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(19)など話題作を次々に発表。

長編映画の他にもオムニバス、テレビドラマも数多く手がけており、『パルプ・フィクション』と『ジャンゴ』でアカデミー脚本賞を受賞している。かねてより「長編映画を10本監督したら引退する」と公言しており、現在、10作目となる監督作『The Movie Critic』(原題)の準備を進めている。

preview
close
next
ローレンス・ベンダー
製作

1957年、米NYブロンクス出身。大学在学中からダンサーとして活動を始め、怪我でその道が絶たれた後、俳優を目指しながらアメリカン・フィルム・インスティテュートで働きはじめる。映画製作者としての道を歩きはじめた頃、タランティーノと出会い、本作の製作を担当。以降、『デス・プルーフ』を除く『イングロリアス・バスターズ』までの全タランティーノ作品でプロデューサーを務めた。その他の作品に『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(97)、『ザ・メキシカン』(01)、『不都合な真実』(06)、『カポネ』(20)など。なお、本作では銀行から逃走するMr.ピンクを追いかける警官役でも顔を見せている。

preview
close
next
アンジェイ・セクラ
撮影

1954年、ポーランド・ヴロツワフ出身。自国の映画スタジオで写真家として働きはじめ、映画カメラマンとして従軍。除隊後はテレビドキュメンタリーのカメラマンとして働き1980年に渡米。CFやドキュメンタリーを数多く手がけた後、本作の撮影を担当する。タランティーノ監督とは続く『パルプ・フィクション』(94)、『フォー・ルームス』(95)でもタッグを組んだ。1998年にはマイケル・マドセン主演作『ブラック・ハート』(未)で監督デビューを果たし、『キューブ2』(02)などの作品でメガホンをとった。その他の参加作品に『アメリカン・サイコ』(00)、『モーテル』(07)、『パシフィック・ウォー』(16)など。

preview
close
next
サリー・メンケ
編集

1953年、米NYミネオラ出身。ドキュメンタリーの編集からキャリアを開始し、1983年に初めて長編映画の編集を手がける。本作の脚本を読み、編集として参加。以降、タランティーノの創作に欠かせないスタッフのひとりとして『イングロリアス・バスターズ』(09)までの全作品の編集を担当。『パルプ・フィクション』と『イングロリアス・バスターズ』ではアカデミー編集賞の候補になった。その他の参加作品に『狼たちの街』(96)、『すべての美しい馬』(00)など。2010年に急死し、以降のタランティーノ作品の編集は『キル・ビル』のアシスタント・エディターを務めたフレッド・ラスキンが引き継いでいる。

preview
close
next
KNB EFX Group
特殊メイクアップ

『死霊のえじき』(85)や『死霊のはらわたII』(87)などの特殊メイクを手がけたロバート・カーツマン、グレッグ・ニコテロ、ハワード・バーガーによって1988年に米ロサンゼルスで設立された特殊効果スタジオ。『処刑!血のしたたり』(88)でKNBとして初めて映画作品を担当し、その後、『エルム街の悪夢5 ザ・ドリームチャイルド』(89)、『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(90)、『トレマーズ』(90)などに参加。1992年に本作の特殊メイクを手がけた後も、『ジャッキー・ブラウン』を除く全タランティーノ作品で特殊メイクを担っている。その他の参加作品に『フロム・ダスク・ティル・ドーン』(96)、『マイノリティ・リポート』(02)、『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』(03)など。

preview
close
next

プロダクションノート

映画の歴史を変えた 名作の誕生

かつて映画は、スタジオと契約した“プロ”のつくるものだった。しかし、家庭用フィルムカメラが普及すると映画館に通い詰めていた若者たちは自分で映画をつくりはじめた。そこに登場したのが、タランティーノら”ビデオで浴びるように映画を観る世代”の登場だ。

彼らは同じシーンを巻戻して繰り返し観ることができるようなった最初の世代。彼らのつくる映画は、映画館で1回観ただけではすべてがわからない複雑な展開や、一瞬では気づかないような細部のこだわりがふんだんに盛り込まれた。彼らにとって映画はビデオで何度も繰り返し観ることで完全に理解され、展開や細部を発見できるものだからだ。そこには過去の名作映画のオマージュや引用もふんだんに盛り込まれる。ビデオの登場以来、過去の映画がいつでも気軽に観られるようになったことで、作り手も観客も新作を通して“古今東西の名作”を再発見していった。

『レザボア・ドッグス』の成功は世界各地の若者を刺激し、それぞれが自分の“レザボア”を作り始める。90年代インディーズ映画ブームは、ポール・トーマス・アンダーソン、ダーレン・アロノフスキー、クリストファー・ノーランらを輩出。振り返れば、現代の映画は“ここ”から始まったのかもしれない。

観客の予想外の展開の 連続・連鎖

本作は冒頭から観る者の意表を突き、翻弄する展開の連続だ。犯罪映画なのに強盗たちはレストランでマドンナの歌詞の解釈について延々と激論を交わし、映画のタイトルが出たかと思えば、すでに宝飾店の襲撃は終わり、男のひとりは血を流している。観客は何が起こったのかわからないが、それでも物語は一直線に進むことはなく、それぞれのキャラクターの回想が差し込まれることで、次第に真実が明らかになっていく。観客の予想を華麗に裏切り、次々に繰り出されるエピソードがパズルのように組み合わさっていく構成の巧みさが本作の最大の魅力だ。さらに本作では肝心の宝飾店襲撃のシーンは全く描かれず、強盗たちの準備やムダ話ばかりが紹介される。通常の犯罪映画が“描かない”ことだけで出来上がった本作は、公開時の観客に新鮮な驚きをもたらしたのだ。

“見せない”ことで生まれた 伝説のバイオレンス

罠にかけられ、追い詰められた男たちは疑心暗鬼の中で、罵り合い、互いに銃を向け合い、怒号渦巻く中で壮絶な駆け引きを繰り広げる。そのすべてが観客に強烈な印象を残すが、中でも伝説になっているのが、Mr.ブロンドによる拷問シーンだ。捕えられ、椅子に縛り付けられた警官を前に、Mr.ブロンドはラジオからのメロディに乗せて軽快にステップを踏む。観客が爽快感を感じた瞬間、Mr.ブロンドは手にしていたカミソリで警官の耳を切り落とす! 愉快な場面で観客が油断しているところに予告なく衝撃的な場面やバイオレンスを喰らわすタランティーノの十八番は、このシーンから始まった。本作では実際には耳を切り取る瞬間は描かれていない。実際にこの目で観る恐怖よりも、画面に映っていない観客が“想像する恐怖”の方が強烈であることを彼は知っているのだ。緊迫、爽快感、そして観客を急襲するショック&バイオレンス。巧みに構成された暴力描写が本作をさらに苛烈なものにしている。

撮影で芽生えた男たちの絆

本作の撮影時、タランティーノはまだ28歳の無名の若者だったが、すでに人気俳優だったハーヴェイ・カイテルを除いて、俳優たちも多くが”これから”だった。消防士をしながら俳優の道を模索していたスティーブ・ブシェミ、英国でキャリアを積んだティム・ロス、ハリウッドで頭角を現しつつあったマイケル・マドセンらキャストの多くは野心あふれる若き才能で、彼らがぶつかり合うことで本作の熱気は高まっていった。脚本に惚れ込んで現場に出向いた俳優たちとタランティーノ監督の間には確かな友情が生まれ、本作以降も彼らはタランティーノ作品の常連俳優になっていく。劇中で男たちは疑い、怒鳴りあい、殺しあうが、演じた彼らの間には堅い絆が生まれたのだ。

タランティーノの原点

誰よりも映画を愛し、映画を観るのではなく、その世界に生きようとした男。好きな映画を大胆に引用し、唯一無二の世界を生み出し続けるタランティーノの手腕は本作ですでに確立されている。犯罪者がお互いを色の名前で呼び合う『サブウェイ・パニック』をはじめ、『特攻大作戦』『現金に体を張れ』『スカーフェイス』『友は風の彼方に』など彼の愛する映画のイメージ、手法がふんだんに盛り込まれ、1970年代のワンヒットワンダー(一発屋)のポップミュージックが劇中を彩る。彼の映画づくりはこの後、さらに進化を遂げていき、三幕もの犯罪劇『パルプ・フィクション』、愛するダグラス・サーク風のロマンス劇と犯罪映画を交錯させた『ジャッキー・ブラウン』と次々に新作を発表。タランティーノは映画監督の枠を超えて、時代のアイコン、ポップカルチャーの象徴として人気を集めるようになった。かねてから長編監督からの引退を表明している彼は現在、最後の長編の準備中だ。だからこそ、このタイミングでタランティーノの“原点”をスクリーンで観ることに、大きな意義と喜びがあるはずだ。